竹林調査について
竹バイオマス事業計画の前提ともいえる竹林面積。
これについて大きな問題点があります。
当初、竹バイオマス事業は農水省のバイオマス利活用交付金を利用した事業でした。
この事業には前提があります。
未活用バイオマス(使われていないが、資源となる動植物)の4割以上を使う事業でなければ補助金が受けられません。
竹バイオマスの場合、未活用の竹がどれだけあるかがわからなければこの事業自体補助事業にあたるかどうかすらわからないはずです。
そのためには竹林の面積や密度、活用されている竹、未活用の竹がどれだけあるかの調査が必要です。
もちろん、竹バイオマスを使った事業をする場合にはより綿密な調査が必要になることは言うまでもありません。
果たして、それが適正に行われていたのでしょうか。大きな疑問点があります。
町がバイオマスタウン構想提出するにあたり、御船町が調査費用を負担し、
竹を含めた町全体のバイオマス調査、構想策定が「NPO法人鹿児島環境資源ネットワーク」に委託されました。
それが、平成20年3月25日提出されたこの
「バイオマスタウン構想」構想書です。
ここの3ページで紹介されている熊本県林業統計要覧(平成17年度版)では、
森林面積が5,577haで、竹林面積が全体の14.8%となっています。 これから算出すると、竹林面積は825haとなります。
ところが、同じ書類の8ページでは、…御船町全体では、約763ha の竹林があり
県内でも有数の竹林面積を誇る…とあって、竹林面積は763haとなっています。
この「763ha」と言う数字は、県の民有林資源調査書にも載っています。
実はこの数字、大変不確実な数字です。
県の担当者の方にお聞きしたところ、この数字はもう十年以上前、
航空写真から割り出した森林簿を基準に積算されたものと言う事で、
杉やヒノキなどは、植樹や伐採の記録があるので、それらの面積を積算するとの事。
しかし、竹に関しては実態調査が難しく、少なくとも確認できた
民有林資源調査書内の御船町竹林面積の数字は、平成16年度から
平成22年度の最新版まで、7年間も約763haと同じ数字が記載され続けています。
(
平成16年4月発行分と、
平成22年4月発行分の齢級別林種樹種別森林資源構成表はこちら)
現実の竹林面積は推測の域を出ません。
町はその後、通産省の補助金を利用し、竹バイオマス調査事業を行います。
(調査事業については、こちらの
竹バイオマス調査事業計画書をご覧ください)
そのことを審議する平成20年7月議会で町は、「統計上竹林面積は700〜800ha存在する事になっているが
まったくそれ以上の調査というものは過去にわたってやっていない。」と答弁します。
(この
議事録をご参考ください)
民有林資源調査書の数字や、この答弁により、通産省の補助金を利用したこの調査が終わって
初めて、御船町の竹林面積がわかり、御船町の竹未活用バイオマス総量がわかることになります。
通産省の補助金を使ったこの調査事業委託先の選定は、競争入札で行う事になっていましたが、
竹バイオマス調査事業計画書では、すでに委託予定先として「NPO法人環境開発研究所」の名前があります。
その後2社による入札の結果、落札したのは、予定通りNPO法人環境開発研究所でした。(落札」金額は税込み587万円)
この事業では、調査報告を業者に委託すると共に、バイオマス等未活用エネルギー調査検討委員会を立ち上げ、
連携してやっていくとの事でした。平成20年10月8日に第一回御船町バイオマス等未活用エネルギー調査検討委員会が開かれます。
検討委員には、調査を委託されたNPO法人環境開発研究所の理事、御船竹資源開発鰍フ設立時取締役で現社長の別役氏もいます。
最初の委員会での竹林面積についての認識ですが、
第一回調査検討委員会議事録をご覧になってみればわかりますが、こう書いてあります。
「…御船町には約800ヘクタールの竹林があるといわれているが、きちんとした数字ではない。
バイオマスタウン構想を作る時も県が所有している中山間地域の航空写真から引き出しているが確たるものではない。
本当にどれだけの竹林があるのか確定できていないのが現状だ、今回の事業で竹林面積を確定したいと思っている」
と言う事は、この時点でもまだ竹林面積は確定できていない事になります。
ところが、その検討委員会からわずか8日後、会社登記承認前の
御船竹資源開発鰍ゥら、町に事業実施計画書が出されます。
その事業計画書の中に書かれている竹林面積の数字は、県の民有林資源調査書と同じ、
そしてバイオマス構想の中に書かれているものと同じ763haです。バイオマス賦存量なども同じです。
その後、御船竹資源開発鰍フ事業は認可され、平成20年12月18日、
農水省から約5億2100万円の交付金交付決定通知があります。
そして同日、第二回御船町バイオマス等未活用エネルギー調査検討委員会が開催されます。
第二回調査検討委員会議事録を見ると、11月8日から12月7日までの間で竹林の現地調査が行われています。
つじつまが合いません。
何年も同じ数字が並ぶ熊本県民有林資源調査書、議会での答弁や、調査検討委員会の議事録を見る限り、
まだ竹林面積も、未活用バイオマス量も想像の範囲を出ません。
本当に地域バイオマス利活用交付金の条件に当てはまるかどうかも定かではありません。
しかし、会社は事業計画を提出し、国も町も認可し、交付金交付決定までしているのです。
平成21年1月27日、国から町に交付金2億円が支払われます。
同日、最後になる第三回御船町バイオマス等未活用エネルギー調査検討委員会も開かれます。
(
第三回調査検討委員会議事録はこちら)
平成21年2月10日、町から御船竹資源開発鰍ノ2億円の補助金が支払われます。
平成21年2月20日、バイオマス等未活用エネルギー調査事業が正式に終了し、町へ調査結果、竹台帳等が納品されます。
これで初めて、ある程度正確な竹林面積と、竹バイオマス賦存量などがわかるはずです。
しかし、調査報告書の中に記載された竹林面積について二つの表記があります。
一つは「763ha」、そしてもう一つが「750ha」です。
*
調査報告書はこちら(パート1)(パート2)(パート3)(パート4)(パート5)
「750ha」が、航空写真から積算した数字だそうですが、調査書のなかでは航空写真の撮影年は平成17年となっています。
これはどういうことでしょうか。
本来必要な、竹林の正確な面積やバイオマス賦存量を調査しないうちにどんどん事業は進んで行きました。
御船町の竹林面積については、平成16年度の民有林資源調査書でも763ha、
平成20年3月に提出された「バイオマス構想」内でも763ha、
バイオマス等未活用エネルギー調査完了前に御船竹資源開発鰍ェ出した事業計画書の中でも竹林面積は763ha、
バイオマス等未活用エネルギー調査事業終了後出てきた750haと言う竹林面積の根拠は平成17年の航空写真。
現在の竹林面積や竹バイオマス賦存量はまったく調査していないのでしょうか。
バイオマス事業はなぜ、不確実な数字をもとに進んでいったのでしょうか。
増えていると言われた竹林面積が調査をしてみたら減っているのはなぜでしょうか。
竹未活用バイオマスの40%以上を使い、初期投資20億円を超える事業を始めるにあたり、正確な調査は必要ないというのでしょうか。